継続力

IT系サラリーマンが、書籍や講座から学んだこと、効果があった勉強方法を紹介します。

【書評】日経コンピュータ 2020年7月23日号 〜ローコード革命 アフターコロナのDXを乗り切るカギ〜

表紙は、「ローコード革命 アフターコロナのDXを乗り切るカギ」です。

DXを進めるために不可欠な高速開発の手段として、ローコード開発が紹介されています。
コーディングが完全に不要になる可能性を秘めたパワフルな手法を知ることができます。

数ある記事の中から、私が印象に残ったテーマを紹介します。

 

 

印象に残ったテーマ① ローコード革命による大幅な納期短縮、迫られる上流シフト

コードをなるべく書かない「ローコード開発」が浸透しつつあるという記事が紹介されていました。
既にマイクロソフトセールスフォース・ドットコム等はローコード開発ツールに力を入れています。

ローコード開発により、従来1年以上開発に要していたような案件が数ヶ月で終わったり、コーディングしない分、製造等の下流工程の仕事が減り、要件定義などの上流工程の仕事の重要性が高まっていくようです。

昨今のDXの流行の中で、開発スピードの重要性が高まっているため、SIerもローコード開発スキルを身につける必要があると感じました。

 

印象に残ったテーマ② みずほの勘定系刷新の成果

みずほが勘定系の刷新に成功したことによるメリットがいくつか紹介されていました。

例えば、顧客情報を一元管理したことで、事務センターの集約による効率化が行え、これまで後方事務を担っていた人員を顧客と向き合うフロント業務にシフトさせることが可能になったようです。
また、開発期間の大幅な短縮にも成功し、着実に勘定系システムの刷新による成果が出始めているようです。

このような話を見ると、大変な痛みを伴ってでも、2025年の崖に直面する前に、会社の重荷になっている勘定系システムを刷新し、効率化していく重要性を感じました。

 

印象に残ったテーマ③ IT担当者はプロCIOを目指すべき

前号に引き続き、プロCIOに関する記事が紹介されていました。
これからDXを推進するためには、その指令塔となる優秀な人材が必要なため、プロCIOのニーズが高まるということなのでしょう。

DXを推進するためには自社の人材だけではスキル不足になる可能性があるため、積極的な中途採用が必要です。
その際、自社のCIOが他社のことを全く知らないようなようでは、優秀な人材を見極めることができず、優秀な人材が集まりにくくなってしまいます。
そのため、転職を経験している、広い視点を持ったCIOの存在価値が高まっているようです。

このことから、IT担当者は終身雇用を信じて1社に留まるよりも、自分の価値を高めるために積極的に転職し、チャレンジする姿勢が求められていると思いました。
今の楽を取るよりも、将来の自分の価値を高める行動に重きを置くように気をつけたいものです。

 

まとめ

ローコード革命のように普段の業務では関わることがない知識を幅広く得られるのが日経コンピュータの良いところです。
他にも、非常に勉強になることが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。

【書評】日経コンピュータ 2020年7月9日号 〜ハンコをなくそう 契約・精算・行政、「デジタルの壁」突破法〜

表紙は、「ハンコをなくそう 契約・精算・行政、「デジタルの壁」突破法」です。

コロナ後に広がりを見せている各種業務の電子化の動きや、小売店の省人化の取り組み等が紹介されています。
また、プロCIOという働き方についても紹介されています。

数ある記事の中から、私が印象に残ったテーマを紹介します。

 

 

印象に残ったテーマ① スマホで顧客自身がレジ打ち代行

食料品スーパー大手のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)が、顧客が自らのスマホで商品バーコードを読み取り決済できるサービス「Scan&Go」の本格展開を始めた記事が紹介されていました。

レジの省人化に関しては、「Amazon Go」が有名ですが、「Amazon Go」の導入にはセンサーやカメラ等が必要であるため、初期導入のハードルが高いという課題がありました。
この「Scan&Go」は、今やほぼ全ての人が持っているスマホを活用するため、店舗にとって導入のハードルが低いというメリットがあります。
コロナウイルス拡大により、レジ前の混雑を避けたい状況ですので、このようなレジの省人化サービスにどんどん進歩して行って欲しいものです。

 

印象に残ったテーマ② NTTデータがサービスデザイン強化のために新ブランド立ち上げ

NTTデータがサービスデザインに関わるデザイナー集団組織「Tangity」を立ち上げた記事が紹介されていました。
サービスデザインでは、単なるシステムの開発ではなく、サービスを使う人の視点に立ち、より良いサービスの設計を目指します。
NTTデータのような大企業の動きに追従する企業がどんどん現れるでしょう。

このようなユーザ視点に立ったサービス設計スキルを磨くために、多くのサービスに触れたり、幅広いコンテンツからの情報収集に力を入れる必要性を感じました。

 

印象に残ったテーマ③ プロCIOという働き方

チューリッヒ保険のCIO「木場武政氏」の活躍が紹介されていました。
チューリッヒ保険といえば、保険業界という個人情報の取り扱いが厳しい業界において、コロナ対策として、いち早く在宅勤務の活用に乗り出した企業ですね。
なぜ、これだけ早い導入ができたのか疑問でしたが、木場氏のようなプロCIOの活躍によるところが大きかったのでしょう。

木場氏は「ITを駆使して企業の業績を伸ばすのがCIOの本質的な役割」という考えを持っています。
ITをビジネスに活用するスキルがCIOには必要なのですね。

IT部門だからといて、ビジネスに無頓着で良いとはならないため、高い視座で物事を見る癖を付けていきたいものです。

 

まとめ

世の中の動きを正しく理解し、ユーザ視点に立ち良いサービスを設計するスキルがSEに求めらつつあることを再認識させられました。
他にも、非常に勉強になることが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。

【書評】ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年 8月号  〜気候変動〜

表紙は、「特集1:気候変動、特集2:不安とともに生きる」です。
昨今のコロナウイルスの広がりや、SDGsの広がりを受けて、気候変動に関する課題と各社の対策に関する特集が組まれていました。
数ある記事の中から、私が印象に残ったテーマを紹介します。 

 

 

印象に残ったテーマ① 国連が公表したショッキングなデータ

国連が2018年と2019年に公表した報告書では、以下2点が報告されたようです。

①気候変動の最悪な結果を回避するためには、2030年までに二酸化炭素排出量を45%削減し、2050年までにゼロにしなくてはならない。
②各国政府の現在の計画と公約では、この目標に遠く及ばない。排出量はいまも増え続けている。 

 

昨今のSDGsの広がりは、この報告書によるところも大きいのでしょうね。
経済活動の拡大に伴い年々エネルギー消費量が増えている世の中において、二酸化炭素排出料を減らすのは、至難の技ですが、取り組まざる負えない状況が来ています。
例えば二酸化炭素排出量が少ない電気自動車へのシフト等、各業態において対策を進める必要があります。

 

印象に残ったテーマ② 環境保護の動きによりROIの概念が変わる

一般的なROI(投資利益率)の概念は、「投資額に対してどれだけ利益を生み出しているか」です。
しかし、昨今、海外の企業において、「何を利益として捉えるか」の概念が変わりつつあるようです。

通常、利益には金銭的な価値のみが含まれますが、海外企業の間では、環境保護のような無形の価値も含めるようという動きが起こっています。
確かに、どれだけ環境保護の観点で優れた会社か評価する指標がないと、会社の頑張り損になってしまうため、早く一般的な指標値が設定されることを願ってやみません。

「何かの目標を達成しようと思ったら、その目標の達成度を評価するための指標値を設定する」という、当たり前ではありますが、難しいことを直ぐにやろうとする海外企業の動きの早さが印象的でした。
 

印象に残ったテーマ③ コンクリート建築からの脱却

コロナウイルス拡大後のニューノーマルな社会では、今の世の中では当たり前であるコンクリートを前提とした建築は下火となる可能性があるようです。
こうなると、大都会の高層ビル群の姿が一変するのかもしれませんね。

新型コロナウイルスの感染拡大で人口や企業が集中するリスクが取り上げられる中で、昨今、首都移転の動きが再燃しているというニュースも報じされています。
気候変動の話やコロナ後のニューノーマルな社会の話を受けて、今まで当たり前だったことを見直し、早急に適応していく柔軟性がこれまで以上に求められていることを痛感しました。

 

まとめ

いままでの常識を見直す必要があることを痛感させられる記事が多く取り上げられています。
非常に勉強になることが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。 

【書評】入山章栄「世界標準の経営理論 」 〜ビジネスパーソンにも役立つ経営理論を紹介〜

「世界標準の経営理論」
「どれだけ難しい内容が書いてあるんだろう。。。」と、読むのをためらってしまいますよね。

本書の内容は確かに難しい部分もありますが、基本的には「学生」や「経営とは無縁のビジネスパーソン」にも読みやすい文章で書かれています。
経営理論って面白いかも、と思わされる知識が盛り沢山ですので、おすすめです。 

 

本の紹介

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

 

著者「入山章栄」氏は、慶応義塾大学卒業後、三菱総合研究所で調査・コンサルティング業務に従事、米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得し、現在は早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)で教授をされている凄い方です。
他の経営理論の教授とは異なる、異質なキャリアを積んできた筆者だからこそ書けた「至極の経営理論」を学ぶことできます。 

 

印象的なポイント① 経営と無関係のビジネスパーソンも経営理論を学ぶメリットは十分ある

ビジネスパーソンに説明の軸を与え、説得性を高めて行動につなげ、②汎用性が高く無数の事象に応用でき、そして③時代を超えて不変、なのが世界標準の経営理論なのだ。

経営者の中には、ご自身が進めたい会社の戦略が部下になかなか理解されない経験をお持ちの方も多いだろう。それは、自身の深い考えが経験値からくるものなので、十分に言語化されていないからだ。
しかし、そこに経営理論があれば、それは「その課題をなぜ進めなければならないのか」「なぜこの方針が重要なのか」のwhyに、一つの切れ味の良い説明を与える。結果として、周囲に説明がしやすくなり、彼ら・彼女らを納得・腹落ちさせ、行動につき動かせるのだ。経営理論は、もはや机上のためだけにあるのではない。むしろ行動のためにあるのだ。

「なぜ経営理論を学ぶ必要がある」のかが紹介されています。

確かに数学とかであれば、決まった公式があって、なぜその答えになるのか疑いようがないので、納得感がありますよね。
ビジネスにもこのような「なぜ」を与えられるものがあるという点に驚きです。

本書は全41章に渡り、様々経営理論を紹介しており、難解な部分もあり、全て読み切るのはやや苦労すると思います。
が、これだけのメリットがあるのであれば、「読まなければ!」という気になるのではないでしょうか?
本書の読み方ですが、筆者が冒頭で提案している通り、気になる章をピックアップして読む方法がいいと思います。
私が読んだ中で面白かった章は、「第8章、9章 ゲーム理論」、「第12章、13章 知の探索・知の深化の理論」、「第18章 リーダーシップの理論」、「第36章 グローバル経営と経営理論」です。
時間をかけてでも全部の章を読んでみようと思える本です。

 

印象的なポイント② ビジネス上の価値を生み出すためには、広範囲の知の探索が必要

シュンペーターによると、「新しい知とは常に、『既存の知』と別の『既存の知』の『新しい組み合わせ』で生まれる」のだ。

「ブレークスルーなアイデアを生み出した特許」と「経済価値を生み出した特許」を抽出したのである。そして統計分析を行った結果、「前者を生み出すのはやや狭い範囲の知の探索で、後者を生み出すのは広い範囲の知の探索である」という結果を得たのだ。

アイデアのつくり方」の本でも、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という表現がありました。
やはり、新しいものは、何もないところから突然見つかるのではなく、既存の知識の新しい組み合わせなんですね。

では、どれだけ広範囲に渡って新しい組み合わせを探す必要があるのかということに、本書は解を与えてくれています。
ビジネス上の価値を生み出すためには、広い範囲で新しい知識を求める必要があるのですね。
この点を踏まえて、IT技術者であっても、ITと関係ない経営等を学ぶのは将来的な価値に繋がると期待を持って、勉強を続けたいと思いました。

 

印象的なポイント③ 人がなぜ他人を信頼するのかはゲーム理論で説明できる

我々は「人間の心の中には見返りなしに『無償で人を信じる』部分がある」と考えがちだ。心理学や社会学でも、この「性善説の心のメカニズム」を主張する研究者も多い。しかし経済学のゲーム理論では、人の信頼は「無限繰り返しゲームをする人々が、自身と相手の損得を考えた上での合理的な判断の帰結として起きている」ととらえるのだ。

ある人と「これから長い付き合いになる」ということは、その人と無限繰り返しゲームを行うということだ。そうであれば、その人とはこれから何度も何度も付き合っていくのだから、「相手も自分を裏切るのは合理的ではないと考えるだろうし、自分も相手を裏切るのは合理的ではない」と予測するのだ。

人がなぜ他人を信頼するかという根源的な問題ですら、経営理論の一つ「ゲーム理論」で説明できるかもしれないのですね。
確かに、相手と一回きりの付き合いで、何を言ったところでその後の人生に影響を及ぼさないのであれば、全て本音ベースでの付き合いになるでしょうね。
全ての行動に説明を与える可能性を秘めている経営理論の力強さを感じました。

 

まとめ

本書を読む前後で仕事や勉強に対するスタンスが間違いなく変わる本だと思います。
学ぶことで人生が豊かになることが感じられる非常に良い本でした。
他にもためになることがいっぱい書いてあるので、ぜひ読んでみてください。

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

 

【書評】日経コンピュータ 2020年6月25日号 〜アフターコロナに踏み出せ IT部門が率いる、次の危機にも動じない3つのDX〜

表紙は、「アフターコロナに踏み出せ IT部門が率いる、次の危機にも動じない3つのDX」です。
アフターコロナで成長するために、「IT部門の3密を解消する取り組み」や、「スピード感を持ってDXを推進するための取り組み」が紹介されています。

数ある記事の中から、私が印象に残ったテーマを紹介します。

 

 

印象に残ったテーマ① 富士通が新サービスで「ご用聞き」脱却を目指す

富士通がIT基盤・運用関連サービス「FUJITSI Hybrid IT Service」の提供を始めた記事が紹介されていました。
事前に仕様の決まったサービスを組み合わせて使うプレフィックス型のサービスです。

今までの富士通は、顧客の要望にきめ細かく対応するSI事業がメインでしたが、追加開発のコストがかさみ、利益率が低くなってしまうという課題があったようです。
このプレフィックス型サービスの導入で、追加開発の発生リスクを下げ、利益率向上を目指します。

IT業界は、どうしても顧客の追加要望により、追加開発が発生し、人件費がかさむという問題点があります。
富士通の取り組みは、事前に決められたサービス体系の範囲で選んでもらうことで、追加開発が発生しなくなり、IT業界の労務改善にもつながりそうな、良い取り組みだと思いました。
IT大手の富士通が成功することで、他社がこの動きを真似するキッカケになれば良いと思います。

 

印象に残ったテーマ② これからは手が動かせるエンジニアの重要性が高まる

ホームセンター大手の「カインズ」のDXへの取り組みが紹介されていました。
その中でも、DX推進のための人材獲得として、「プロジェクト管理ではなく、実際に手を動かして自らコードを書ける人を重視している」という点が印象的でした。

日本のIT業界の、「昇級するためにはプロジェクトマネジメントを経験しなくてはならない」という傾向を変えることが目標のようです。
確かに、優秀なプログラマが海外に流出してしまっているというニュースは幾度となく見てきました。
カインズのような企業が増えることで、日本におけるプログラマの待遇が改善し、国内に優秀なプログラマが増えると良いと思います。

 

印象に残ったテーマ③ 2020年度版SI要素技術ランキングは「デザイン思考」がトップ

デザイナーがデザインする時の思考方法を使って、ビジネスや社会の問題を解決するための思考方法である「デザイン思考」が2020年度版SI要素技術ランキングのトップでした。
実務で使ったことはありませんが、確かに最近多くの記事で目にする言葉です。

「デザイン思考が流行っていること」と「前述のカインズのように、プログラマの重要性が高まっていること」は密接に関連していると思います。
各社ともにDX推進を本気で目指す中で、仮説をスピード感を持って形にして、検証することが欠かせなくなってきているのでしょう。
何が流行るか分からない世の中だからこそ、実際に形にするスキルの重要性が高まっているのですね。
プロジェクトマネジメントだけでなく、仮説を形にする能力を高めていく重要性を感じました。

 

まとめ

「同じような業務はできる限り共通化し、開発コストを抑えるための富士通の考え方」と、「DXの動きの中で、新しいものをスピード感を持って開発するデザイン思考の考え方」という2つの考え方が学べました。
他にも、非常に勉強になることが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。

【書評】シバタナオキ「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」 〜仕事に役立つ決算書の読み方を紹介〜

普段から決算書を読む習慣はありますか?

「決算書を読んでも、日々の仕事には役立たないのでは?」、「決算書見てもよく分からない」と思ってしまい、なかなか決算書を継続して読もうという気にならないですよね。
本書は、「決算書を読むとどんなメリットがあるのか?」や「決算書を読むハードルを下げるコツ」を紹介してくれています。

また、著者「シバタナオキ」氏の鮮やかな企業分析を読むと、「自分も筆者のように、企業分析ができるようになりたい!」と思うこと間違い無しです。 

 

本の紹介

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

 

著者「シバタナオキ」氏は、元・楽天株式会社執行役員(2009年まで。当時最年少)で、SearchMan共同創業者。東京大学助教授、スタンフォード大学で客員研究員もされていたことがある、凄い方です。
筆者が楽天勤務時代に身につけ、現在に至るまで続けている決算書の読み方のコツの一端を本書から学ぶことができます。

 

印象的なポイント① 決算書を読む習慣をつけることでビジネスの勘所が身につく

スーツ側の人間は、エンジニアを「ビジネス面で融通の利かない人たち」と見ていたりするのですが、Bさんは決算分析を繰り返しているうちに「ビジネスにも理解のある頼れるエンジニア」だと認識されるようになったのです。別の見方をすれば、Bさんは決算を読むことでビジネスの勘所を学び、サービス開発だけでなく事業そのものをコントロールできるエンジニアに近づいたのだといえるでしょう。

シリコンバレーでは、日々新しいサービスが生まれています。そして、誰もが画期的なテクノロジーとビジネスモデルで既存産業をDisrupt(破壊)してやろうともくろんでいます。そんな「成長こそすべて」な環境で働くには、エンジニアもビジネスに対する感度を高く持っていなければなりません。

Bさんの場合、この高度なビジネスセンスを、決算を読み続けることで身につけたのです。

「決算を読む習慣をつけるとどんなメリットがあるのか?」気になりますよね。
企業のサービス開発は利益を目的として行われること考えると、「このサービスを開発すると、どれだけ売り上げに貢献できるだろう」、「このサービスはいくらぐらいで開発するのが妥当だろう」という視点が必要です。

こういった疑問にエンジニア自身が答えを持つために、決算書が使えるということですね。
「世の中の気になるサービスが会社の業績に与えたインパクト」や「業績が良い会社の好調要因は何か?」といったことを意識して、決算書を読む習慣を是非とも身につけたいものです。

印象的なポイント② 筆者の鮮やかな決算分析・企業間の比較

決算を上手に読むための10カ条の中に次の項目があります。

9.1社だけではなく、類似企業の決算も分析・比較する

10.類似企業間の違いを説明できるようになる

本書の中で5つのの分野(EC、FinTech、広告、個人課金、携帯キャリア)を題材として、筆者の決算書の読み方が紹介されています。
いずれの分野についても、筆者の分析能力の高さに舌を巻きました。

例えば、携帯キャリア(ドコモ、KDDIソフトバンク)同士の比較だけであれば、よくありそうですが、さらに、各社がMVNOに力を入れている理由まで分析しています。

また、国内企業同士の比較だけに止まらず、「食べログ」とアメリカのレビューサイト「Yelp」と比較することで「食べログの今後の成長可能性」を分析したり、日本の「AbemaTV」とアメリカの「Netflix」を比較したりと、海外の情報まで含めた分析を繰り広げています。
筆者の分析能力の高さに感動しました。

また、本書の題名には反しますが、やっぱり英語が完璧にできると情報収集の質も上がるため、英語の必要性を感じました。

 

印象的なポイント③ 成長し続ける企業であり続けるために大事なこと

決算書の読み方は関係ありませんが、Amazonが何故成長し続けられるのかについて、Amazonの「株主へのレター」が紹介されています。

意思決定には絶対に後戻りできない「タイプ1の決断」と、そうでもない「タイプ2の決断」の2種類があり、後者に関しては現場に権限委任して、スピード感を持って決めていくべきだとかいてあります。失敗したらやり直せばいい、ということです。
 中略
本当に後戻りできない意思決定というのは、数としてはさほど多くありません。しかし、会社が大きくなると些細な(というと失礼かもしれませんが)意思決定でさえも、二度と後戻りができない意思決定と同じように、慎重に議論されるようになります。それこそが「大企業病」の元凶であり、それを避けていきたいと書いてあります。
巨大でありながら、新しい発明をし続ける会社でありたい、というジェフ・ベゾスCEOのメッセージが非常によく伝わるレターです。

大企業でありながら、ECだけでなく、AWS、AmazonEcho等、様々なチャンレンジを物凄いスピードで続けられているのは、ジェフ・ベゾスCEOのスタンスによるものが大きいのですね。
何でもかんでも経営者の承認が必要な、多くの日本企業とは真逆のスタンスですね。
会社が成長し続けるためには、会社のトップのスタンスが大事だと思いました。

まとめ

筆者の企業分析を見ていると、決算書からこんなことまで分かるのかと驚かされます。
とにかく、1社15分程度と時間を決めて、多くの情報に触れる癖を付けたいと思わされる本です。
他にもためになることがいっぱい書いてあるので、ぜひ読んでみてください。 

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

 

【書評】ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年 7月号  〜リーダーという仕事〜

表紙は、「答えのない時代をともに切り拓く リーダーという仕事」です。

昔の日本のように、アメリカという先駆者(=答え)がいて、アメリカの真似をしていれば上手くいく時代は終わりました。
現代のような、リーダー自身も答えが分からない世の中において、「リーダーはどのような役割を果たすべきか?」というのが今回のテーマです。

数ある記事の中から、私が印象に残ったテーマを紹介します。

 

 

印象に残ったテーマ① 経営者の3つの重要な役割

リーダーの最たる例として、経営者の役割を次のように説明しています。 

①会社の方向性を示す。
②決めるべきことを決めるべきタイミングで決定し、その結果責任を負う。
③人事:誰に何を委ねるかを決める。

 

特に、”結果責任を負う”というのが印象的でした。

自分で決めないのは、失敗した時に責任を問われるのを避けたいからという場合も多いのです。でも失敗した時には自分できちんと後始末をすればいいし、そこから学べば同じような失敗をしなくなります。
ソネット時代の投資案件の中には、エムスリーのように大きく成功したものもありましたが、その裏では失敗もありました。しかし、失敗した投資案件の後処理をきちんとやる中で、多くを学ぶことができました。

結果責任は上司に任せれば良いや」という軽い意識で、深く考えずに適当にやってしまうと学ぶことも少ないですよね。
一方、「結果責任を自分が負うのだからしっかり考えなきゃ」という気持ちで真剣に取り組めば、仮に失敗しても、失敗から学び、次は同じ過ちを起こさなくなるのでしょう。
結果責任を自分が負う」という意識を持って、取り組むのが大事なのですね。
ソニーの社長でも、過去には失敗を経験しているということを知り、「失敗無くして成功は無いんだな」と改めて思いました。

 

印象に残ったテーマ② 社長の能力を組織の限界にしないためには、誰が決めるべきかを意識することが重要

私の限界を組織の限界にしないためには、私が決めるべきこと以外は、経営チームのメンバーや各事業のリーダーに任せること、そして、社員には挑戦の機会を多く与えて、失敗から素早く学習できる組織にしていくことです。
なぜなら、失敗したことから学ぶ人は、「失敗という経験値」によってバリューが上がるからです。そのためには、「失敗を恐れず、失敗から学ぶ」という企業文化の醸成が不可欠で、その環境づくりはマネジメントの役目です。
それを実行するために、パーパスを設定して大きな方向性を示し、任せるべき人に任せ、決めるべきタイミングで決めるようにさせています。

失敗してもやり直せる、チャレンジできる組織風土を作ることが重要ですね。
ソニーほどの大企業が一時の停滞を脱却し、成長できる企業に返り咲いたのは、トップのこのような改革があったからなのでしょう。
良い経営者に恵まれた会社で働く社員は幸せだと思います。

また、誰が「結果責任を負うべきか」ということを意識して、何でもかんでも上司に責任を押し付けるのではなく、「自分が結果責任を負うべきでは無いか?」ということを意識することが重要であることも学びました。

 

印象に残ったテーマ③ 判断力を鍛えるためには傾聴スキルが欠かせない

優れた判断力を構成する6つの基本要素(学習、信頼、経験、中庸、選択肢、推敲)を磨くためのコツがいくつか紹介されていますので、必見です。
その中でも、BPのCFOボーダフォンの副会長等、様々な輝かしいキャリアを歩んできた「ジョン・ブキャナン」氏の話が印象に残りました。  

ブキャナンと出会った瞬間から交流を重ねる中で、ずっと印象に残っているのは、目の前にいるのが筆者であれ誰であれ、意識を逸らさずに向き合う姿勢だ。彼ほどの実績を積んでいれば、とっくに人の言うことに耳を傾けなくなり、尊大に振る舞うようになってもおかしくない。
聞き上手なだけではない。人があえて口に出さないようなことを聞き出すのもうまい。
彼が投げかける問いは、興味深い回答を引き出すために組み立てられたものだ。

会社で多少偉くなると、部下の話を全く聞かなくなる人っていますよね。
ただ、真に凄い人は、人から得られる情報の重要性が分かっているため、人の話をしっかりと聞く意識を持ち続けられるのでしょう。
傾聴スキルを意識的に伸ばしていく重要性を感じました。

 

まとめ

「すでにリーダーを担っている人」、「これからリーダーを担う人」のどちらにも役立つ記事でした。 
非常に勉強になることが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。