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【書評】入山章栄「世界標準の経営理論 」 〜ビジネスパーソンにも役立つ経営理論を紹介〜

「世界標準の経営理論」
「どれだけ難しい内容が書いてあるんだろう。。。」と、読むのをためらってしまいますよね。

本書の内容は確かに難しい部分もありますが、基本的には「学生」や「経営とは無縁のビジネスパーソン」にも読みやすい文章で書かれています。
経営理論って面白いかも、と思わされる知識が盛り沢山ですので、おすすめです。 

 

本の紹介

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

 

著者「入山章栄」氏は、慶応義塾大学卒業後、三菱総合研究所で調査・コンサルティング業務に従事、米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得し、現在は早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)で教授をされている凄い方です。
他の経営理論の教授とは異なる、異質なキャリアを積んできた筆者だからこそ書けた「至極の経営理論」を学ぶことできます。 

 

印象的なポイント① 経営と無関係のビジネスパーソンも経営理論を学ぶメリットは十分ある

ビジネスパーソンに説明の軸を与え、説得性を高めて行動につなげ、②汎用性が高く無数の事象に応用でき、そして③時代を超えて不変、なのが世界標準の経営理論なのだ。

経営者の中には、ご自身が進めたい会社の戦略が部下になかなか理解されない経験をお持ちの方も多いだろう。それは、自身の深い考えが経験値からくるものなので、十分に言語化されていないからだ。
しかし、そこに経営理論があれば、それは「その課題をなぜ進めなければならないのか」「なぜこの方針が重要なのか」のwhyに、一つの切れ味の良い説明を与える。結果として、周囲に説明がしやすくなり、彼ら・彼女らを納得・腹落ちさせ、行動につき動かせるのだ。経営理論は、もはや机上のためだけにあるのではない。むしろ行動のためにあるのだ。

「なぜ経営理論を学ぶ必要がある」のかが紹介されています。

確かに数学とかであれば、決まった公式があって、なぜその答えになるのか疑いようがないので、納得感がありますよね。
ビジネスにもこのような「なぜ」を与えられるものがあるという点に驚きです。

本書は全41章に渡り、様々経営理論を紹介しており、難解な部分もあり、全て読み切るのはやや苦労すると思います。
が、これだけのメリットがあるのであれば、「読まなければ!」という気になるのではないでしょうか?
本書の読み方ですが、筆者が冒頭で提案している通り、気になる章をピックアップして読む方法がいいと思います。
私が読んだ中で面白かった章は、「第8章、9章 ゲーム理論」、「第12章、13章 知の探索・知の深化の理論」、「第18章 リーダーシップの理論」、「第36章 グローバル経営と経営理論」です。
時間をかけてでも全部の章を読んでみようと思える本です。

 

印象的なポイント② ビジネス上の価値を生み出すためには、広範囲の知の探索が必要

シュンペーターによると、「新しい知とは常に、『既存の知』と別の『既存の知』の『新しい組み合わせ』で生まれる」のだ。

「ブレークスルーなアイデアを生み出した特許」と「経済価値を生み出した特許」を抽出したのである。そして統計分析を行った結果、「前者を生み出すのはやや狭い範囲の知の探索で、後者を生み出すのは広い範囲の知の探索である」という結果を得たのだ。

アイデアのつくり方」の本でも、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という表現がありました。
やはり、新しいものは、何もないところから突然見つかるのではなく、既存の知識の新しい組み合わせなんですね。

では、どれだけ広範囲に渡って新しい組み合わせを探す必要があるのかということに、本書は解を与えてくれています。
ビジネス上の価値を生み出すためには、広い範囲で新しい知識を求める必要があるのですね。
この点を踏まえて、IT技術者であっても、ITと関係ない経営等を学ぶのは将来的な価値に繋がると期待を持って、勉強を続けたいと思いました。

 

印象的なポイント③ 人がなぜ他人を信頼するのかはゲーム理論で説明できる

我々は「人間の心の中には見返りなしに『無償で人を信じる』部分がある」と考えがちだ。心理学や社会学でも、この「性善説の心のメカニズム」を主張する研究者も多い。しかし経済学のゲーム理論では、人の信頼は「無限繰り返しゲームをする人々が、自身と相手の損得を考えた上での合理的な判断の帰結として起きている」ととらえるのだ。

ある人と「これから長い付き合いになる」ということは、その人と無限繰り返しゲームを行うということだ。そうであれば、その人とはこれから何度も何度も付き合っていくのだから、「相手も自分を裏切るのは合理的ではないと考えるだろうし、自分も相手を裏切るのは合理的ではない」と予測するのだ。

人がなぜ他人を信頼するかという根源的な問題ですら、経営理論の一つ「ゲーム理論」で説明できるかもしれないのですね。
確かに、相手と一回きりの付き合いで、何を言ったところでその後の人生に影響を及ぼさないのであれば、全て本音ベースでの付き合いになるでしょうね。
全ての行動に説明を与える可能性を秘めている経営理論の力強さを感じました。

 

まとめ

本書を読む前後で仕事や勉強に対するスタンスが間違いなく変わる本だと思います。
学ぶことで人生が豊かになることが感じられる非常に良い本でした。
他にもためになることがいっぱい書いてあるので、ぜひ読んでみてください。

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論