継続力

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【書評】日経コンピュータ「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」」 〜二度の大規模障害を追体験〜

2019年に稼働開始したみずほの新システム「MINORI」の開発ストーリーと、2002年と2011年の大規模システム障害の3本立てです。
新システム「MINORI」の開発ストーリーでは、「手でのコーディングを禁止する」等、4千億円もの超大規模開発では「ここまでやるのか」と唸る施策が多く登場します。

また、2002年と2011年の大規模システム障害の章では、「もし自分が当時のシステム担当だったらゾッとするな」という話が多く登場します。
ただ、障害の話から恐怖を覚えるだけでなく、学ぶことも非常に多かった本です。

みずほのシステムのような超大規模プロジェクトは一生の内に立ち会う機会がないかもしれませんが、本書を通じて超大規模プロジェクト、障害を追体験できるため、是非読んでみてください。 

 

 

印象的なポイント① 最適な判断を下すのが経営陣の責任

システム障害の全面復旧に向けて張り切るシステム部門に「待った」をかけて、銀行全体にとって最適な判断を下すのが、経営陣の責任である。みずほ銀行の経営陣には、それができなかった。

東日本大震災直後の2011 年 3 月 14 日夜から 24 日にかけて発生した、大規模なシステム障害の流れが生々しく記述されていました。
自分が当時の担当だったらと想像すると、かなり恐怖を覚えるような内容でした。

当時、「刻々と悪化していく障害への対応方針を、経営陣が適切に決められなかったこと」が最大の問題であったと述べられていました。
この文章を読んで、改めて適切な判断を下す難しさを感じました。

「システム担当の対応が予定通りうまくいき、被害が最小限で収まるかもしれない」
「そうであれば、わざわざ万全を期して、一般ユーザ向けサービスを停止しなくてもいいだろう」
「一般ユーザ向けサービスを止めたのに、障害対応が直ぐに終わったら、後で内外から何を言われるか分かったものではない」
「根拠はないが、最悪の事態はきっと起きないはずだ。。。」

等と、ついつい甘い考えが浮かんでしまい、厳しい決断を下すのは本当に難しいことだと思います。
こういった中でも、「後で後悔しないための最善の決断を下すためにどうすべきだろう」と、考えさせられました。 

印象的なポイント② システム障害は経営の失敗そのもの

「このシステム障害は、経営の失敗そのものだ」。二〇一一年三月にみずほFGが引き起こした二度目の大規模システム障害を、企業情報システムの専門誌である「日経コンピュータ」はこう評した。
みずほFGの経営トップは勘定系システムの刷新を現場任せにして、情報システムのことを理解せず、必要な資金や人員を投入することができなかった。情報システムの開発に際して業務部門が情報システム部門に全面的に協力したり、関係各所の利害を調整したりできるようリーダーシップを発揮することも怠った。経営陣のIT軽視、IT理解不足が、大規模システムの根本的な原因だった。 

近年はスマホの普及等により、高齢者にもインターネットが浸透しており、もはやIT技術無しのビジネスは有りえなくなりつつあります。
そのため、近年の経営者はIT技術が重要であり、理解する必要があるという意識が芽生えていると思います。

ただ、東日本大震災あたりの時期は、まだまだスマホが普及し始めたばかりで、経営者にIT技術が重要であるという意識が十分ではなかったのではないでしょうか。
そういった場合でも、世の中の情報化の流れを一早く感じ取り、経営者にとって専門外であるIT技術に対する知識を習得しようと努力する姿勢が必要だったのでしょう。
「経営者たるもの、知らないでは済まされないので、専門外のことも学ぼうという意気込みが大事」であることに気づかされました。

 

印象的なポイント③ 外部環境の変化を認識することの必要性

二日連続でこのようなシステム障害が発生した根本的な原因は、みずほ銀行が情報システムを取り巻く外部環境の変化やサービスの拡充に合わせて、情報システムを見直してこなかったことにある。

 「システムはリリースした瞬間に陳腐化する」とよく言われます。
基本的にはシステムは設計時点で見通せていた社会情勢に基づいて、最適な動きをするように設計されています。
「設計時点で想定していた社会情勢と実際の社会情勢にズレが生じていないか」を、正しく把握するようなことをしていないと、大きな問題に繋がってしまうことが理解できました。

「実際の社会情勢を正しく把握するため」にも、日々ニュースに目を通し、世の中の動きをキャッチアップすることの重要性を感じました。

まとめ

数々の判断謝りにより大きな問題に繋がってしまった障害事例を知ることができました。
結果はどうなるか分かりませんが、後で後悔しない、最善の決断を下すために自分ができることは、「事実を正しく捉えるために専門外の分野についても知識を身につけること」、「集めた事実を元にリスクを評価すること」だと思いました。
自分が実際に被害に合ってみないと気づけないようなことに、気づかされる良い本でした。 

他にもためになることがいっぱい書いてあるので、ぜひ読んでみてください。