【書評】安宅和人「イシューからはじめよ」 〜生産性向上において本当に考えないといけないことを紹介〜
仕事をしていると「論理的に考えること・説明すること」や「短時間で質の高いアウトプットを出すこと」を求められますよね。
「最短で質の高いアウトプットを出すにはどうすればよいか」が気になっていた時に、本書を読みました。
- 本の紹介
- 印象的なポイント① 知識労働において、生産性をあげる方法
- 印象的なポイント② やる意味がある仕事(イシュー度の高い仕事)を見極める方法
- 印象的なポイント③ 「質」が高い仕事を最短で行う方法
- まとめ
本の紹介
安宅和人氏は略歴を見ただけで、優秀さが物凄く伝わってきます。
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東大で修正号取得後にマッキンゼー入社。
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4年半の勤務後にイェール大学に入学。
普通は7年弱かかるところを3年9ヶ月で学位取得。
本書では、著者が、誰にでもわかるような分かりやすさで、知的生産のシンプルな本質について説明しています。
印象的なポイント① 知識労働において、生産性をあげる方法
生産性とは?
P22
生産性=アウトプット÷インプット=成果÷投入した労力・時間
この式から、成果に結びつく、意味のある仕事(筆者いわく、「バリューのある仕事」)を効率的に生み出せないと生産性はあげられないことがわかります。
この本には、「バリューのある仕事」を効率的に生み出す方法が記載されています。
「質」が高い仕事(バリューのある仕事)とは何か?
P25
僕の理解では、「バリューの本質」は2つの軸から成り立っている。ひとつめが、「イシュー度」であり、2つめが「解の質」だ。
P26
僕の考える「イシュー度」とは「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、そして「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出しているかの度合い」となる。
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「イシュー度」の低い仕事はどんなにそれに対する「解の質」が高かろうと受益者(顧客・クライアント・評価者)から見たときの価値はゼロに等しい
「イシュー度」と「解の質」の両方を高める必要があるということですね。
上司から言われた仕事だと、ついつい深く考えずに仕事に取り組んでしまいがちですが、「本当にこの仕事で解決すべきことは何か」を考えてから、取り組んだ方が良いということかと理解しました。
また、「イシュー度」が高くないと、そもそも「解の質」がどんなに高くても意味がないので、解く意味のある問題(=時間をかける意味がある問題)を見極める必要があるということですね。
イシューとは何か?
「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」とは、以下の両方を満たすものです。
P25
・2つ以上の集団の間で決着がついていない問題
・根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
すでに、前例があるような仕事(例えば手順化されている仕事)は、この定義にあてはまらないので、「イシュー度」は高くないことになります。
つまり、「やり方が決まっているか?決まっていないか?」という問いかけで、少なくとも「決まっていない」という答えが返ってこないとイシューではないということだと思います
例えば、作るものが決まっているITプロジェクトでは、イシュー度を求める仕事ではない部分が多数を占めていると思います。当然、課題等で方針が決まっていないものは、イシューに成りうる要素はあります。
逆に、イシュー度が低い仕事で、やる必要性が高いものは、「プロセスの改善」に力を注ぐ必要があります。
仕事に手をつける前に、「自分の仕事はそもそもイシュー度の高さを求める必要があるのか」を考えることで、自分の仕事の生産性を高めるための方向性が決まることになります。
イシュー度の高い問題から始める必要がある
P31
「イシュー度」の高い問題から手をつける。この場合、「解きやすさ」「取り組みやすさ」といった要因に惑わされてはならない。あくまで、「イシュー度」の高い問題からはじめる。
自分の仕事が「イシュー度の高さ」を求める仕事であれば、手をつける仕事を「イシュー度の高い仕事」に絞り込んで、「イシュー度の高い仕事」に全力を注いだ方が良いということですね。
印象的なポイント② やる意味がある仕事(イシュー度の高い仕事)を見極める方法
良いイシューの3条件とは?
P55−56
1 本質的な選択肢である
2 深い仮説がある
3 答えが出せる
一つ目の「本質的な選択肢である」(=カギとなる質問)は「論点」とも表現されるものですね。
仕事の中で、「議論がうまくかみ合わない場合」や「会議がやたらと長い場合」は、そもそも論点を明確にせずに話している場合が多い気がします。
仕事を進める上で、「どういう選択肢がありえて」、「選択肢によって、その後の行動が大きく変わるのか」を考えるのが重要です。
どちらの選択肢をとっても、その後の行動が大きく変わらないのであれば、どちらの選択肢を選ぶかは、単なる個人の趣味の問題なので、さっさと決めてしまいましょう。
二つ目の「深い仮説がある」においては、「どの選択肢を推すか」スタンスを取ることが重要です。
最短で、選択肢に答えを出すためには、「どの選択肢を推すか」スタンス決めて、「その選択肢が正しいことを証明」するように動くことが必要です。
スタンスを取っていれば、その選択肢が正しいか、正しくないかを早く見極めることができます。
実際の仕事において、自分の考えを示さずに、人の意見に乗っかってしまったりすると、結果的にうまくいかなった場合に、人のせいにもしてしまいそうですね。
また、自分の考えが全く無いことになってしまうので、仕事がつまらなくなると思います。
三つ目の「答えが出せる」については、「現時点で得られる情報から、どこまで答えが明確に出せるか」を意識することが重要です。
現時点で、「全て情報が集められるのか」、それとも「全て集められないのか」。「全て集められないのであれば、いつになれば、全て集められるのか」を見極める必要があります。
先にならないと情報が集まらない場合は、現時点で悩んでも答えがでない可能性が高いです。情報が集まる時点で、情報収集して、結論を出すようにスケジュール化することが重要です。
イシュー特定の具体的な方法とは?
本質的な選択肢を見つけ、仮説を立てるための方法を紹介しています。
イシュー特定のための情報収集
P75−86
考えるための材料を入手する
コツ① 一次情報に触れる
コツ② 基本情報をスキャンする
コツ③ 集め過ぎない・知り過ぎない
「現場に行って、実際に物をみてみる」等が重要ということですね。机の上だけで考えても無駄だということです。
それでもイシューが見つからない場合の5つのアプローチ
P87−99
アプローチ① 変数を削る
アプローチ② 視覚化する
アプローチ③ 最終形からたどる
アプローチ④ 「So what?」を繰り返す
アプローチ⑤ 極端な事例を考える
どうしても、イシューが特定できないときは、上記を順番に試すことが必要ということですね。
具体的な手順なので、実際の仕事に活かせそうです。
イシューが特定できたら、「知恵袋的な人」に相談する
P46
仕事や研究の経験が浅い段階では、このイシューの見極めを1人でやることはお薦めできない。
P47
「知恵袋的な人」をもっているかどうかが、突出した人とそうでない人の顕著な差を生むのだ。
会社でいうと、上司が「知恵袋的な人」だと幸運ですね。
そうでは無い場合もあると思うので、有識者に自分からアプローチする行動力が必要ということですね。
印象的なポイント③ 「質」が高い仕事を最短で行う方法
P34
イシュードリブン:今本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める
仮説ドリブン①:イシューを解けるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する
仮説ドリブン②:ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する
アウトプットドリブン:ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する
メッセージドリブン:論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる
P35
大事なのは、このサイクルを「素早く回し、何回転もさせる」ことだ。
特にこれらのアプローチの中で、仮説ドリブン②の「分析」に関する記載が印象に残りました。
P150〜151
「分析とは何か?」 僕の答えは、「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同士を比べ、その違いを見ることだ。
分析では適切な「比較の軸」がカギとなる。〜どのような軸で何と何を比べるのか、どのように条件の仕分けを行うのか、これを考えることが分析設計の本質だ。
この本は、論理的に考えて、アウトプットを出すまでの流れが体系的に書いてあって分かりやすいです。
実際に全ての流れを完璧にこなす必要性は、仕事の種類によると思いますが、分析については、多かれ少なかれどの仕事でもちゃんと理解しておくことが必要だと思います。
会議等で問題について議論する際に、「軸」を意識して話すことで、相手に自分がしっかりと考えていることが伝わりますし、早く結論を出すことができると思います。
詳細な手順は、本に記載されていますので、是非読んでみてください。
まとめ
特に仕事が溢れていて、目の前のタスクに手一杯になっている人にこそ読んで欲しい本だと思います。
生産性をあげるためには、単に一つ一つ目の前の仕事をこなすだけではダメであることが分かります。
他にもためになることがいっぱい書いてあるので、ぜひ読んでみてください。